朝焼けが見たい

地平線が燃えているような朝焼けを見たことが一度だけあって、私は病弱な子供だったのでなんでもないような風邪でその頃よく入院していて、その朝焼けを見たのも病室の中だった。

その時はおたふく風邪か何かを拗らせており、広い個室に1人入院していた。

入院中は、母と母方の祖母、父方の祖母の三人が交代で付き添っていてくれて、その日は父方の祖母が一緒にいてくれた。

病院生活は退屈だしご飯は美味しくないしおたふくはうつるから隔離状態だしで散々だった為日中もほとんど寝て過ごしていた。当然早寝早起き生活で、昼間の寝溜めもあり朝はとんでもなく早い時間に目が覚めてしまうこともしばしばだった。

その日も多分早く目が覚めてしまったのだと思う。ぼんやりとする意識の中で、窓の外を見ると暗い空の下、辺り一面が真っ赤に燃えていて、火事だと思った。

おばあちゃん、火事だ…と泣きそうになりながら寝ている祖母を起こす。祖母は驚くこともなく、窓の外を見やって、ああかほちゃん、あれは朝焼けっていうんだよ、と教えてくれた。外へ見に行こうと言われ、2人で起き抜けの体で一緒にベランダ(病室の外から行ったのかもしれないが昔のことなので判然としない)へ出た。

病室は高い階だったので、遠くの建物までよく見えた。まだ暗く紺色の空が広がる中、地面と空の境目が赤く燃えていて恐ろしいくらい綺麗だった。

しばらくそれを眺めていると、太陽が昇ってきて、紺色だった空も白んで行く。さっきまでの光景が嘘みたいにあっという間に、よく知っている朝の空になった。

風邪が悪くなるからもう中へ入ろうねと祖母に促され、病室に戻り、私は看護師さんに叩き起こされるまでまた眠った。

あれから、何度も朝早く起きたり朝まで遊んだりしたが、あんな綺麗な朝焼けを見たのはあれっきりだ。場所の問題? かといって山登りしてまで見る気はさらさらないが。

朝はいつも新しくなった気分になって良いよね、まだ冷たくて新しい空気の中を歩きたい、最近は寒くて全然起きれないけど

好きな人と朝焼け見れたら良いのになと思う、休日の昼間に起きてゴロゴロしながら。