祖母と本の貸し借りを始めた

元図書館司書の祖母に中学生の頃から借りっぱなしの村上春樹を、最近になって読みたいから返して欲しいと連絡がきたので、かなり申し訳なく思いながら返しに行った。今度は私がなにかおばあちゃんに本を貸そう!と思って、相当昔に買った、万城目学の「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」というかなり可愛い本を持って行った。祖母は大層喜んでくれ、「かほちゃんがどんな本を読んでいるのか気になる、此の方の本は読んだことがないので楽しみ」と言った。

数日して、祖母宅に行った父から祖母から託された「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」が返ってきて、とても可愛くて良い本だった、あなたが教えてくれなかったら一生読まなかったと思うので、本当にありがとう、とお礼の電話がきた。これは昔読んでいたと聞いたけど、最近はどんな本を読んでいるのかしら、と聞かれて、最近は全く読んでないのだと伝えるのも何だか恥ずかしくて情けなく、ん〜いろいろだよ、と答えを濁した。

素敵な本を教えてくれたから、と貸した本の他に数冊の本を祖母がくれた。

カミュカフカと、カミュのペスト評が載っている文芸春秋である。

「若い頃カフカにかぶれていてね、かほちゃんにも是非読んでほしいの」と、近くに本屋も無いだろうに新品の文庫を買ってくれたのである。

正直、カミュカフカ…おばあちゃん、読めるか自信ないよ…と思ったが、せっかく買ってくれたもの読まねば、という気持ちと、村上春樹カフカを愛読書とする祖母になんだか全然見当違いの本を貸してしまったのでは…と恥ずかしくなってしまった。

手始めにカフカの変身に手をつける。カバーに書いてあったあらすじを読むとなんだかすごく面白そうだった。薄い文庫本だし、すぐ読み終えておばあちゃんに感想を伝えるぞと意気込んだものの、全く読み進めることができない。日本語訳のせいなのか、カフカがそういう文章をかくのか、それとも時代のせいなのか、とにかく読みづらくて仕方がない。あと暗くてどうしようもない。なにかどんでん返しがなきゃやってられないよ!と思いながら読んでるが、まあどんでん返しがないほうが通常の人生だなと思いながら、まだ読み終わってない。

すごく面白い日本の作品を読むと、ああ日本人で良かったな〜と思う。でも同時に、英語で書かれた作品とか中国語の作品とか、母国語以外で書かれた本は本当の意味で楽しめないんだと思うと悔しい。

昔すごく好きだったイギリス人が書いたシリーズ物の児童書があり、この本は2人の日本人が巻によって交互に日本語訳を書いて出版されていた。このうちの1人が書いた方がそれはもう面白くてしょうがなかったが、もう1人の方は全然面白くなくてほとんど読んでいない。訳によってこれほど違いが出るなんてびっくりだが当然な気もするし、使う言語によって同じ話が全く別の作品になっていることってたくさんあるんだろうな。というか、これは本に限った話じゃなく、何かを楽しむために素のままの自分だけ用意しておけば良いものって段々少なくなってきているんじゃないか。前提として知識とか、歴史とか、ある程度自分の身だしなみを整えた上じゃないと本当に面白いものに気付かないのでは!?(非常に当たり前のことに気付いてしまったぜ…)勉強しなきゃ〜…